アトピー性皮膚炎治療マニュアル

 ステロイド外用薬の使い方

 ステロイド外用薬の塗り方のポイント

ステロイド外用薬の塗り方のポイント

ステロイド外用薬は、保湿外用薬を塗ったあとに、炎症や傷のある部位に重ねて塗ります。ステロイド外用薬の軟膏は、「大人の人さし指の先から第一関節まで出した量を、大人の手のひら約2枚分の面積に塗る」のが適量になります。軟膏を皮膚に"ちょんちょん"と配分し、しわに沿って皮膚にのせるようにして塗ります。ステロイド外用薬を使用する場合、適量を塗らなければ標準治療を行っていることになりません。適量を塗ると、べたつくように感じるため、適量より少ない量を使っているということがよくあります。べたつかないようであれば、量が少ないことが考えられます。また、毎日適量のステロイド外用薬を塗って、皮膚の赤みがなくなり状態が改善されても、医師の指示どおり徐々に量を減らしながら塗り続けることが大切です。赤みがなくなってきても、皮膚の内部には炎症を起こす細胞が残っているからです。皮膚をつまんでみて硬い場合はまだ炎症が残っていますから、皮膚が軟らかくなるまで塗り続けるようにします。なお、ステロイド外用薬の減らし方については、担当医とよく相談することが大切です。

 ステロイドの使用法

●塗る順序
保湿外用薬を先に塗り、そのあとにステロイド外用薬を塗る。
●塗る期間
赤みが取れても、皮膚をつまんでみて硬ければ、炎症は治まっていない。担当医と相談し、徐々に量を減らしながら、皮膚が軟らかくなるまで塗る。
・ステロイド外用薬は、強さによって「最も強い」から「弱い」まで5段階の種類があり、症状に合わせて適したものが処方される。
・ステロイド外用薬には、軟膏のほかローションタイプがある。ローションタイプを希望する場合は、担当医に相談する。

 ステロイド外用薬について知っておきたいこと

ステロイド外用薬の副作用には、「皮膚が薄くなる」「塗った部位の毛が多くなる」「にきびができやすくなる」などがあります。これらは、使用量や使用頻度を減らすと、次第に元に戻ります。「ステロイド外用薬を使うと皮膚が黒くなる」と心配する患者さんがいますが、これは副作用ではありません。炎症が治まる過程で起こる現象の一つで、治療を続けるうちに皮膚の色は徐々に改善していきます。二度使ったらやめられなくなる」というのも、誤った情報です。医師の指示どおりに使って、皮膚をよい状態に保ちましょう。

 漫然と使いすぎると、局所的な副作用が出ることがある

外用薬は局所的に作用するだけですから、内服薬のような重大な副作用は、ほとんど心配することはありません。まれに入院が必要なくらいの垂症例で、ステロイド外用薬を大量に使って、副腎の機能が低下することがありますが、これは薬をやめると元に戻ります。一般の診療では、そんなに大量のステロイド外用薬を処方することもありません。ステロイド外用薬はよく効く半面、つねに薬の力で血管を収縮させる働きを補っているため、本来からだに備わっている皮膚の血管を収縮する能力が低下していきがちです。非常に強いランクのステロイド外用薬を使い続けた場合は、薬を塗った部分を中心に局所的に、皮膚がほてってむくみやすくなったりします。皮膚が赤黒くなったり、毛深くなるなどの副作用が出ることもあります。ただし、こうした副作用も漫然と治療を続けた場合に起こりやすいのです。よく効くからと、自己判断で必要以上に大量に塗り続けたり、市販の塗り薬でステロイドが含まれているものを併用したりすると、こうしたことが起こる可能性があります。また、薬に対する感受性は非常に個人差があり、薬がよく効く場合もあれば、副作用が出てしまう場合もあります。このため、医師は細心の注意を払い、副作用が出る可能性も視野に入れて、薬を処方し診療を行っています。大切なことは副作用の可能性だけに振りまわされるのではなく、医師の処方を正しく守り、決められた量を決められた塗り方で使うことです。そのうえで、冷静に副作用のチェックを行いましょう。そして、決められた日に診察を受ければ、万が一、副作用があらわれたとしても早めにチェックでき、副作用に対処することができます。

 ステロイド外用薬の局所的副作用

皮膚の萎縮(皮膚が薄くなる)
毛細血管の拡張(血管が網目のように見える)
ステロイド紫班(出血しやすくなる)
ステロイド潮紅(赤みが増す)
皮膚線条(妊娠線のようなもの)
多毛症(体毛が少し濃くなる)
ステロイドざ瘡(二キビ)
ニキピダニ性ざ瘡(ダニによる二キビ)
酒さ様皮膚炎(顔が赤くブツブツする)
口囲皮膚炎(口のまわりが赤くブツブツする)
乾皮痘(カサカサ肌になる)
感染症(細菌、真菌、ウイルス)

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