アトピー性皮膚炎治療マニュアル

 衣・食・住の環境を見直す

 衣類の選び方

まずは衣類のチェックです。特に、直接肌に触れる下着類は、思った以上にアトピーの状を左右するので注意しましょう。衣類は肌への刺激が少ない、天然の素材を選びます。コットン100%のものがベストですが、最近は化学繊維でも肌触りや発汗性のよい素材がいろいろ開発されているので、肌のコンディションを見ながら選んでください。チクチクするウールやザラザラした麻素材などは、肌にすれるたびに刺激を加えるので×。素材だけでなく、下着の縫い目や継ぎ目、レース、ブラジャーやキャミソールのストラップなども要注意です。ワイヤー入りのブラジャーも悪化要因になることが多いようです。バストの周辺は汗をかきやすく、アトピーの症状が悪くなりやすい部分だからです。季節外の衣類を収納する際に使用している防虫剤などが悪化原因になることもあります。新しく買ってきた下着や長期間しまってあった服は、必ず洗濯してから着るようにしましょう。

 アレルゲンを寄せつけない住まい方

アトピー性皮膚炎の人ではダニやハウスダストに反応する人が少なくありません。カビなどで反応する人も多くなっています。ダニやカビは気温20~30℃、湿度70パーセント以上になると、活動が活発になります。気密性の高いコンクリート性の住まいやオフィスでは、つねにダニやカビが繁殖しやすいと考え、住環境を整えることが必要です。ダニやハウスダストなどを少なくするためには、室内をなるべくシンプルにすることをおすすめします。室内にいろいろな飾り物があったり、凹凸があると、ほこりがたまりやすくなります。ダニはほこりをえさにして繁殖します。床は板の間が望ましいですが、カーペットの場合は毛足が短いものにします。毛足の長いカーペットはダニの温床になりやすいものです。部分敷のマットなども置かないにこしたことはありません。照明器具は、かさがついているタイプより天付に裾えつけるタイプのほうがほこりがたまりにくく、掃除の手間も省けます。

 季節に応じた工夫は?

 暖房は低めに設定して、温風が直接当たらないようにする

暖房

暑い季節に症状が悪化しやすい人にとって、冷房は強い味方です。ただし、フィルターはカビのすみかになりがちです。ほこりもつきやすく、汚れた空気をまき散らしやすいものです。フィルターは一過聞に一回程度は掃除機をかけて洗い、吹き出し口のほこりを拭き取ります。エアコンの風が直接からだに当たると、乾燥しがちの皮膚をさらに乾燥させます。風が直接当たらないようにします。暖房は低めに設定します。顔に直接風が当たると、ほてったりかゆくなったりしやすいので注意します。こたつは、ふとんなどにダニがすみつきやすくなります。オイルヒーターは空気を汚さず、ほんのりと暖まるのでアトピー性皮膚炎の人に向いています。煙などに敏感を人は、空気清浄器を使うのもよいでしょう。こまかいほこりがずいぶん少なくなるようです。この場合も頻繁にフィルターを交換します。新建材や合成塗料などでアレルギーを起こす人は、引っ越しをするとき、建築資材などを確認しましょう。

 空気が乾燥しがちな季節は保湿薬で皮膚の乾燥を防ぐ

冬は空気が乾燥しがちなため、だれでも肌が乾燥しやすくなります。アトピー性皮膚炎の人では、皮膚の保湿成分が減っていて皮脂の分泌も少なめなので、乾燥症状がさらに悪化しがちです。かゆみが強くなりかさついてきて、ひっかくと粉がふいたようになります。湿疹が出ていなくても、皮膚がザラザラしていたり、カサカサしているとき、あるいはかゆみを感じるとき、入浴後につっぼり感があるところには、保温薬を塗っておきましょう。保湿薬は医師の処方のものでも市販のものでもかまいません。軟こうとクリームタイプが ありますが、自分の好みのものをのばして使いましょう。入浴時には保湿作用のある入浴剤を入れたぬるめの風呂に首までつかると、からだ全体がしっとりとうるおいます。最近は暖房が行き届いているため、冬でも汗ばむことがあります。首や耳の後ろ、ひじやひざのくぼみ、足のゆびの間などは、とくに汗ばみやすいところです。入浴時には丁寧に汚れを落としましょう。

 汗ばむ季節は吸湿性の高い衣類で刺激を少なくする

暑い時期は、汗がたまりやすいところを中心にジクジクとした湿疹ができやすくなります。シャワーなどでひんばんに汗を流すのが、いちばんの予防策ですが、外出中はそうもいきません。汗を吸収しやすく刺激の少ない、柔らかい木綿製の衣類を着るのがよいでしょう。汗を吸収しない素材をじかに着ると、皮膚にまとわりついて刺激となります。ガーゼのハンカチなどを何枚も用意して、こまめに汗を拭き取るようにします。

 シーズンに先がけて自分に合った対策を立てる

アトピー性皮膚炎の症状は、人によりあらわれ方が異なります。いつごろからどんな薬を使い、どんなスキンケアをしたらよいか、自分のパターンを見きわめ、早めにかかりつけの医師に相談するのがよいでしょう。季節の変わりめには体調もくずれやすくなります。睡眠不足や過労に気をつけ、つとめて気分転換をしましょう。体温調節もむずかしいので、着脱のしやすい服装で、寒暖の差に対応することも大切です。

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