アトピー性皮膚炎治療マニュアル

 セルフケアのポイント

・体を洗うときは、せっけんをよく泡立て、手のひらでなでるようにして洗う。
・保湿外用薬も、ステロイド外用薬も、"べたつく"と感じる程度に十分に塗る。
・ステロイド外用薬の減らし方については、担当医に相談する。

 正しいケア方法とは

ステロイド外用薬の適量を理解することが大切。

 入浴のポイント

体を洗う

入浴の際には、次の点に注意して、体を洗いましょう。
●優しく洗う
せっけんをよく泡立て、その泡を手に取り、手で軽くなでるようにして体を洗います。重症になると、せっけんの刺激だけでもとリヒリすることがあります。その場合は、ぬるめの湯だけで洗えばよいでしょう。
●傷のある部位も洗う
炎症や傷がある部位も、優しく洗いましょう。
●ぬるめの湯でしっかりすすぐ
せっけんが皮膚に残らないようにします。熱い湯で流すと、皮脂が失われるので、湯はぬるめにします。
●タオルで押さえるように拭く
皮膚をこすらず、押さえるように拭きます。

 保湿外用薬の塗り方のポイント

皮膚を乾燥させないように、次の点に注意して、保湿外用薬を塗ります。
●入浴後5分以内に塗る
入浴後は、短時間で皮膚の水分が逃げてしまいます。肌の潤いが残る「入浴後5分以内」を目安に塗ります。
●たっぷり塗る
全身の乾燥部位にたっぷりと塗ります。"ベトベトする"と感じる程度がちょうどよい量です。
●1日に何回でも塗ってよい
保湿外用薬は、何回塗ってもかまわないので、皮膚が乾燥してきたと感じたときに塗るとよいでしょう。
●保湿外用薬を使い分ける
保湿外用薬には、さまざまなものがあります。市販の保湿剤を使ってもかまいません。例えば、暑い時期にはローションタイプを、寒い時期にはクリームタイプを使うなど、季節や好みに応じて使い分けるとよいでしょう。

 問違ったケア方法とは

保湿外用薬、ステロイド外用薬の塗る量が十分量でないことが多い
「アトピー性皮膚炎」 の患者さんの中には、科学的根拠に基づいた標準治療を行っているつもりでも、次のようにケアの方法が適切ではないために、症状を悪化させてしまうことがよくあります。

●皮膚をゴシゴシと洗う
タオルなどでゴシゴシと皮膚を洗うと、もともと弱い皮膚のバリア機能がさらに弱まります。
●保湿外用薬の塗り方が不適切
塗る量が少なかったり塗り残しがあると、皮膚が乾燥し症状が悪化しやすくなります。
●ステロイド外用薬の塗る量や塗り方が不適切
塗る量が少なかったり塗る期間が短かったりすると、ステロイド外用薬がもつ炎症を鎮める効果を十分に得られません。また、少量を薄く延ばしてすり込むと、皮膚に負担がかかります。
●ステロイド外用薬を途中でやめる
少しよくなったからと、途中でやめてしまうと、再び悪化します。標準治療を適切に続ければ、生活の質を下げることなく、社会生活を送ることができるようになります。

 困っている内容を医師に伝えよう

診察室では、薬のつけ方のほか、皮膚のバリア機能を守るには、どんなスキンケアを行ったらよいか、生活面ではどんなことに気をつけたらよいかをお話してもらえます。しかし、医師が助言できるのは、患者さんの症状などから推測できる範囲に限られるでしょう。患者さんが毎日どんな生活をしていて、どんなことに困っているのか、といったことを、ぜひ患者さんのほうから伝えてほしいのです。洗髪の仕方ひとつにしても、なるべく皮膚を刺激しない方法があります。本HPでは、思いつくままに日常生活でのこまごました工夫を書きましたが、患者さんが知りたい情報のすべてを網羅することはできていないと思います。医師は一般的な知識をもっていても、患者さんひとりひとりの生活全体を見ることはできません。毎日の生活でわからないことなど、患者さんのほうから医師に伝えてください。

 治療方針を知って薬を使い分ける

アトピー性皮膚炎の薬は、症状によって使い分けます。また、体の部位によって薬の吸収が異なりますから、症状が出ている部位によって薬が異なることもあります。このため患者さんほどの薬をどの場所にどんな目的で使うのか、治療方針を知って塗り分けることが必要です。症状がよくなったら、少しずつ弱い薬を使うようにしますが、そうした治療方針も知っておくと、治療がスムーズに進められます。治療を開始したら、症状の変化をできるだけ客観的に把握する努力も必要です。患者さんのなかには医師の目から見れば、だんだんよくなっているのに、まだよくならない、治り方が遅いと落ち込む人も少なくないようです。自分では治りがよくないと思っても、医師によくなっているといわれたら、その言葉を信用して、いたずらに落ち込まないほうがよいのではないでしょうか。実際、前に比べるとよくなっているというふうに前向きに考えるほうが治療の励みになり、治り方も早いようです。ほんとうによくなっていない場合は医師は普段の生活や薬の使い方などを確認して、処方の変更などを検討します。そうした判断こそ医帥にまかせましょう。患者さんは日常の管理に責任をもち、医師は診断や処方に責任をもつという役割分担をして、二人三脚で治療を進めていきたいものです。

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