アトピー性皮膚炎治療マニュアル

 入浴療法でなめらかな皮膚を取り戻す

 ぬるめの湯につかって汚れを浮かせ、皮膚にうるおいを与える

お風呂

お風呂は、からだを洗うのが品だから、といって、浴槽に入らないでシャワーだけですませる人が少なくありません。アトピー性皮膚炎の人は、湿疹がジクジクして細菌感染のおそれがある場合を除いて、基本的には浴槽に全身をつける入浴法がすすめられます。こうすると乾燥ぎみの皮膚に水分が浸透しやすくなり、うるおいを保ちやすくなります。また、ぬるめの湯につかると、皮膚がふやけた感じになり、皮脂腺の中の汚れなども浮いてきて、ゴシゴシ洗わなくても汚れを落としやすいのです。石けんの量も少なくてすみます。米国では、入浴療法といって皮膚が乾燥しがちな患者さんに、ぬるめの湯にしばらく入ってうるおいを与え、療法を試して効果を上げています。皮膚に水分を吸収させておいて、それを全部拭ききらずに、少し残しておいたところにワセリンを塗ってウインドブレイカーなどを着て蒸らすという方法です。

 ナイロンタオルや凹凸のある布で擦らない

お風呂は毎日入って汚れを落としますが、毎回 全身を石鹸で洗う必要はありません。入浴後、全身が突っ張った感じがする人は、石けんを使う回数を減らしたり、陰部やわきの下、足の指の間など、汚れやすいところを重点的に洗うようにしてもよいでしょう。ナイロンタオルでこすると、ふつうの人でもまさつによる色素沈着で皮膚が黒ずみます。アトピー性皮膚炎の人は、もめんでも麻でも紺でも凹凸のある布で皮膚をこするのはやめましょう。ボディブラシやフェイスブラシもおすすめできません。手が届かないところは柔らかい布を使うとしても、ほかは手で泡をすべらせるだけで十分です。とくに手指はこまかい部分まで行き届く天然の道具です。皮膚の変化などにも気づきやすいので上手に活用しましょう。洗剤の刺激を少なくするには、全身を洗ってから流すのではなく、一部分ずつ洗っては流すという方法もよいでしょう。すすぎを十分にすることも大切です。シャワーは単純に上から下へかけるのではなく、わきの下や陰部など、すすぎにくいところに湯がかかるように角度を変えて使います。

 保湿作用のある入浴剤で全身の保湿をするのもよい

普段、全身の保湿がなかなかうまくいかない人は、浴槽に保湿作用のある入浴剤を溶かして入ると、全身がくまなくしっとりします。お風呂から上がる前に浴槽の湯に首までつかり、かけ湯やシャワーをしないで、そのままタオルで水気を拭き取って保温クリームなどをつけます。ただし、入浴剤が皮膚に合わないことがありますから、試供品などで試してみてから使うようにしましょう。入浴剤の入ったお風呂に入ると気分がゆったりしますが、あまり長く入ると、全身が温まってかゆくなることがあります。とくに熱い湯に長時間入ることは避けましょう。湿疹ができているときには、お風呂から上がるとき、湯上がりタオルでキュッキュッと拭き取ると刺激になります。浴用タオルを水あるいはぬるめの湯で絞って全身の水分を吸い取ってから、バスタオルをからだにおおい叩くように水分をとるとよいでしょう。こうすると、お風呂上がりのほてりによるかゆみも、ある程度防ぐことができます。大切なのは、入浴後の保温です。下着をつける前に少し水分が残っている状態で、ふだんカサカサしているところに重点的に保温薬や直販の保温クリームなどをのばすと、よくなじみます。

 頻回の入浴は避ける

脱ステロイドあるいは脱保湿の初期で皮疹の安定化していないときに、温泉療法として長時間の入浴や頻回の入浴は、皮疹安定化が起こらないかあるいは安定化までに時間がかかり勧められません。まして、同じ温泉の水を滅菌もせずに何度も使用することは、細菌感染予防のために避けなければならない。表皮細胞は、これまで分かっているところでは、2種類の抗菌物質を分泌し、余分な細菌の増殖を抑えて皮膚の感染症を予防している。頻回の入浴やシャワー自ら産生する抗菌物質を洗い流すことになり、細菌感染を起こしやすくさせる。皮疹安定化後には理学療法として入浴や温泉を利用することができる。少し熱目の湯に5~10分ほど心臓がドキドキするまでつかっては、しばらく休憩する。これを1回の入浴で数回繰り返す。心臓に対する刺激となり皮膚の新陳代謝を促すことになる。温泉水が直接皮膚をよくするわけでないことに注意が必要である。硫黄泉では皮膚に刺激を与える可能性もある。

ページの上へ