アトピー性皮膚炎治療マニュアル

 標準治療を中止しない

アトピー性皮膚炎は慢性疾患であるため、標準的な治療を行っていても、さまざまな要因によって症状が悪くなることがあります。すると、どうしても"この治療法でよいのだろうか"と不安になりがちで、ステロイド外用薬などの使用を中止し、標準治療以外の方法だけに頼ってしまうというケースも見受けられます。標準治療を中止すると、かゆみはより強まります。いてもたってもいられないほどのかゆみで、勉強や仕事が手につかなくなったり、夜も眠れずに睡眠不足になることもあります。顔が赤く腫れるなど、外見に影響が出るため、人と会うのを避けるようになるなど、社会生活に影響することもあります。また、かきすぎて全身の皮膚が傷つき、あまりの痛みとかゆみから寝たきりになってしまうという人もいます。全身の皮膚が傷つくと、細菌が感染して化膿するなど、多くの場合、入院治療が必要になります。症状が悪くなったときも、自己判断で標準治療のステロイド外用薬などの使用を中止せず、皮膚科専門医に相談して疑問を解決したり、スキンケアの方法を見直したりして、症状の改善を図るようにしましょう。

 医師とのコミュニケーション

医師とのコミュニケーション

標準治療を継続し、皮膚をよい状態に保つためには、医師と十分にコミュニケーションをとることが大切です。例えば、次の点を心がけるようにしてください。

●皮膚をよく見せる
アトピー性皮膚炎では、皮膚の状態がよく変化するため、受診したときは、医師に症状の現れた部位の皮膚を必ず見せます。医師は、視診や触診で皮膚の状態を確かめます。
●薬について聞く
皮膚に塗る薬には、さまざまな種類があります。どの薬を、どこに、どのくらいの量塗るのかを医師によく開くことが大切です。
●疑問があれば質問する
治療法や皮膚の状態などについて、疑問やわからないことが出てきたら、忘れないようにメモしておき、次に受診したときに医師にしっかり質問するようにしましょう。

 アトピー性皮膚炎は薬だけではよくならない

アトピー性皮膚炎は、薬を塗っただけではよくならないということ。アトピー性皮膚炎に使う薬はいろいろな種類がありますが、その中心となるのは、炎症を抑える薬です。医師に処方された薬を指示どおりに使うと、炎症そのものは一週間~二週間でおさまります。しかし、これはおさまっただけで、いつ再発するかわからないのです。炎症を抑える薬は表面的な症状を治したのにすぎません。炎症の下地となった皮膚の状態を改善しなければ、すぐに再発します。「体質的に弱い皮膚を強い皮膚にすることはできないはず」との反論が聞こえてきそうですが、強い皮膚は作れなくても、弱くなっているバリア機能を補うことは可能です。

 皮膚への刺激を少なくして保湿をしっかり行う

バリア機能を補うには、皮膚の手入れをしっかり行い、バリア機能を少しでも蘇らせることが大切です。具体的には水分や皮脂が逃げ出さないような保湿がポイントになります。その前に皮膚の刺激になるような汗や汚れを取り除く、つまり清潔を保つことも欠かせません。皮膚を刺激するものには、すでに説明したようにアレルギー性のものと非アレルギー性のものがあります。いずれにしても生活環境を整えて清潔を保ち、こすったりかいたりといったまさつを避けることが、皮膚への刺激を少なくすることにつながります。生活リズムを整え、過労や睡眠不足を防ぐこと、ストレスをため込まないことも、皮膚のバリア機能の低下を防ぐことにつながります。適度な休養と精神的な気持ちのゆとりは、皮膚の抵抗力を保つ意味でも必要なことです。私は子どものころから、かゆい体質をもっていました。アトピー体質で、別に何もしていないつもりなのにかゆくなったりします。ただ、長年つき合ってきたおかげで、どんなときにかゆくなるか、どんなことに気をつけるとかゆくならなくてすむかが、だいたいわかるようになりました。急に湿疹が出ることもありますが、適切な薬を塗ってスキンケアをきちんと行い、生活のしかたを改善すると、湿疹はひどくならずにすみます。

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